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就職活動ガイド -採用活動の舞台裏?-

就職活動を行うにあたり,ぜひ知っておきたいのが採用活動の舞台裏のことです.

まず,覚えておきたいのは人事部の仕事とは「いかに安く人材を確保し,運用するか」ということです.これを聞くと,人事部って人をこき使うことを考える部署なんだなと思ってしまいますが,実際には違います.ご存知のように,安月給で休みもなく従業員を働かせたら,すぐに文句が出てしまいます.あまりにひどいと会社に何も言わないまま姿をくらましてしまうかもしれません.そうでなくとも,自分の会社に対して,インターネット上に「うちの会社はやばい,就職しないほうがいい」などといった意見が書き込まれることは快く思わないでしょう.そのようなことが起きないよう,さまざまな工夫を凝らして従業員がより気持ちよく働ける環境を作り,効率の良い人材運用を目指すのが人事部です.

さて,人材を確保する方法のひとつが採用活動です.ここで少しでもいい人材を確保することが,企業にとって生き残るための第一歩といえます.以前は,極端な場合は学歴だけで採用をしてもそれほど当たり外れはありませんでした.しかし,現在はそれだけではいい人材を確保できなくなっています.そこで,さまざまなツールを使っていい人材を確保できるよう努力しています.そのひとつがSPIに代表される適性検査です.以前は学歴で足きり(いわゆる「学歴フィルタ」)をしていたものが,現在は適性検査(一般常識や高校レベルの国語・数学・英語と性格検査などを組み合わせる)で足きりをすることが多くなりました.分析結果が数値やグラフで表されるため,足きりには非常に有効とされているようです.今現在も学歴で足きりしているような会社は,学歴で足きりしても必要な人材を確保できているか,人事部が何も考えていないかのどちらかです.そう考えると,研究・開発職で応募対象を理系学部(あるいは建築系,機械系などの特定学科)に限定してしまうことも学歴での足きりといえますが,これがなくなるのはまだまだ先になりそうです.

近年,書類選考を外部に委託するところも増加しているようです.これは応募数が増加しすぎて自社の採用担当者ではとてもさばききれない(例えば,第2段階に100人進めるところ,10000人の応募があるなど)場合があるためです.通常,採用担当者は多くても数人であり,10000人もの応募書類を読むことは到底不可能です.先ほど述べた学歴で足きりをするのもひとつの方法ですが,これに対する批判は少なくなく,いい人材を逃がすことにつながる可能性もあることから,最近ではあまり行われていません.また,書類選考のコスト削減には,コンピュータによる自動選考システムを採用する会社もある(リクナビやマイナビなど,インターネットから応募書類を提出しなければならない会社が怪しい)ようです.外部委託やコンピュータによる自動選考でどの程度が絞り込まれるかは不明ですが,恐らく5人に見せて2人が大いに改善の余地があると思うような応募書類では,外部委託やコンピュータでの選考で落ちることは間違いないといえるでしょう.

さて,学歴といえば指定校枠の話もあります.先ほどの学歴で足きりというのは,指定校枠100%とほぼ等しいことになります.最近ではそのような会社は少なくなりましたが,指定校枠は競争相手が少なく(=内定をもらえる率が高い),特に研究活動に忙しい理系学科の人間にとっては非常においしいシステムです.指定校枠で獲得できる学生は,一定の品質が保障されているとも言え,技術力がものをいう理系の採用現場ではまだ広く活用されています.ただし,指定校枠(推薦)で内定を辞退されると会社としては,「ここの大学の学生,来年指定校枠を設けてもまた辞退されたら嫌だな」ということになります.そうなれば,自由応募(指定校枠でない枠)で質が良い学生の来た別の大学に指定校枠を移したり,指定校枠をひとつ減らしてしまうこともありえます.また,指定校枠(推薦)で入社しておきながら,勤怠成績があまりに悪かった場合も同様のことが起こり得ります.指定校枠(推薦)で応募するのは,本気で行きたい企業だけにしましょう.

ほかにもいろいろな疑問があると思いますので,私なりに答えてみました.

Q.ネクタイの色,メールアドレスなどで落とされるって本当?

A.そんなことを理由に落としたことが発覚したら,インターネットなどで大騒ぎになってしまいます.そのようなことをする会社はほとんどないと考えていいでしょう.過去に「なんとなく暗い性格だから」という理由で内定を取り消し,裁判で負けた企業があります.JRグループの採用試験に私鉄だけで行っても全く問題はありません.反対にそのような理由で落とすような企業は,何か間違っているとしか言いようがありません.

Q.クラブに入っていなかったけど,選考で不利になることがある?

A.企業や職種によっては不利になる場合があります.例えば,鉄道会社の現場従業員(駅員・車掌・運転士など)は,大集団の一員として規律に従った行動が求められます.この場合,上下関係の厳しい体育系のクラブ経験者は,どうしても評価が高くなってしまいます.もちろん,クラブに入っていたかいなかったかで評価が全く変わらない企業・職種もありますので探してみるといいでしょう.

Q.アルバイト経験がないけど,選考で不利になることがある?

A.それだけで不利になることはないと思います.アルバイト経験は,面接の際のトピック(=本人の能力を探り出すツール)として用いられることが多いからです.ただし,アルバイト経験もなく,学業成績や課外活動の実績も芳しくないようだと,早期に内定を取るのはかなり厳しいでしょう.

Q.留年したけど,選考で不利になることがある?

A.留年したことだけで不利になるようなことはないと思われます.しかし,特段の理由もなく留年している(遊ぶためのお金を稼ぐためにアルバイトに精を出し,それによって学業成績が悪くて留年してしまったなど)ような場合は別です.あなたが企業の採用担当者だったら,そのような学生が入社してきたら,与えられた仕事をきちんとこなしてくれると思うでしょうか.

Q.成績が悪いけど,選考で不利になることがある?

A.職種によります.専門的な知識を強く必要とする職種の場合,成績が悪いと書類選考や筆記試験で落とされる可能性は高くなります.一方,専門知識をあまり必要としないような職種の場合,アルバイトや課外活動といったことのほうが重要になります.

Q.理系学部の学生,文系職種に応募したら選考で不利になることがある?

A.職種によっては不利になる場合があります.店員や営業,外交員などといった,比較的誰でもできるような仕事の場合はそれほど不利・有利はありませんが,企画や立案をする仕事になってくると課外活動などの経験がある人が有利になる傾向が強いです.専門的な勉強で忙しい理系の場合,課外活動の経験がどうしても少なくなり,結果として不利になってしまう場合があります.また,文系職種でも専門知識を必要とする仕事もあります(証券取引をする人,法律関係など)のでそのような職種への応募は事実上不可能といえます.